八月後期
『夜のオデッセイア』・『まろばし牡丹』・『神話の果て』
『贋作天保六花撰』・『惣角流浪』・『伝説なき地』
『トリニティ・ブラッド』・『深川澪通り木戸番小屋』
『夜のオデッセイア』
船戸与一 徳間文庫
読始8/17 読了8/18
コメント・・・
非常に面白かった山猫の夏の解説にいくつか船戸作品の紹介が有ったのだが、その中で面白そうだったのがコレ。
八百長ボクサーとマネージャーの駆るステーションワゴンにさまざまな同行者が加わり、一行は成り行きで財宝を目指す珍道中を始める、と。
そういう話です。
冒険小説と分類されるらしいけど、うん。面白い。
中南米の政治情勢を絡めた不思議形式が新鮮。いや、昭和に書かれたものなんだけど。
パーレヴィの隠し財産とか言われてもピンと来ないし・・・
そんな自分でも楽しめるのはキャラが強いからだろう。
ワゴンに乗り込む一人一人に見せ場があり、見せ場を作るために次から次へとトラブルが起きる。
ドキドキワクワクスリリング、と基本的な面白さがあるさ。
『十手小町事件帳 まろばし牡丹』
六道慧 光文社文庫
読始8/18 読了8/22
コメント・・・
オ メ ガ エ ロ ス
全編の半分以上が性交というか房中妖術である。
量ばっかりで質が悪いということはないが、さすがにワンパターンさは否めないか。
しかし、そのうち100%色事だけでストーリーを展開させるのではないかと・・・
仲人かかの壽屋。そこの主人で実は吉宗の隠し子蒼生。お庭番の真琴。竜娘のお銀。花娘の乙葉。猫娘の美弥。
裏の商売は何でも屋の妖堂。
今回は花と剣の使い手伝屍の連也。うっかり電子のレンジと読みそうになってorz
まぁ、そんな本編はどうでもいいような気がするけどね(笑)
『神話の果て』
船戸与一 講談社文庫
読始8/22 読了8/25
コメント・・・
どうにも船戸与一にドップリはまっているようだ。
冒険。ロマンティックな言葉だ。
が、まぁ、本編はそんなにロマンティックではない。
なにしろ主人公は破壊工作員だ。しかも、今度の仕事はアメリカの企業がペルーのウラン鉱山を手に入れるために、その土地を拠点とするゲリラ組織を叩き潰すというもの。
いや、ゲリラというとアレだが、抑圧され続けてきたインディオが民族独立のために行動しているのだから微妙なものだ。
しかも船戸小説は主人公が生き残るとは限らないから油断できない。
そんな緊張感の中、志度正平は計画書に合わせて行動。
刑務所から脱獄させた日系のゲリラ、ツトム・オオシタに化けて標的に合流しようとする。
さらに後ろからは彼を殺そうとする毒虫がジワジワと近づき・・・
非常にスリリングで興奮するね。
『贋作 天保六花撰』
北原亞以子 講談社文庫
読始8/25 読了8/26
コメント・・・
解説によると天保六花撰という歌舞伎があるらしい。
それを北原式にリメイクしたものがコレだ。
だまっていても女が寄ってくる貧乏侍直次郎の仕事は強請りに騙り。
だが、ある時酔った勢いで貧乏御家人の片岡精左衛門の娘に入り婿として入ることになる。
貰い手もいないようなブサイクだと思っていたら、とんだ美人。
ただ、生まれてから17まで病床から出たことが無かったので精神年齢は果てしなく低い。
純真無垢な女房に調子を狂わされながらも、生活するため借金返すため、極道な生き方を続けるのだが・・・
河内山宗俊・丑松・金子一之丞・森田屋清三・三千歳といった仲間とともに。
裏表紙にはピカレスクと書かれていたので浅田次郎的なイキオイを予想していたのだが、そういう角度ではなく、むしろほのぼの人情モノとでもいうべき時代小説。
まぁ、これはこれで良し。
『惣角流浪』
今野敏 集英社
読始8/26 読了8/26
コメント・・・
惣角とは、大東流合気柔術の武田惣角である。
人気格闘マンガ拳児の3巻にも登場するのだが、これは晩年。
この小説の惣角は血気溢れる若き日の武者修行旅の物語。
血気溢れるというか、むしろ敵の血をしぶかせるんだけど・・・
西郷頼母の下で修行したり、加納治五郎と知り合ったり、西郷隆盛と共に西南戦争で戦おうとしたり。
有名人多数登場で明治初期の時代物としても面白い。
『伝説なき地』
船戸与一 講談社文庫
読始8/28 読了8/31
コメント・・・
南米三部作の第三弾。まぁ、三部作といっても別に主人公が同じだったりするわけじゃなく、ただ単に南米を舞台にした三本というだけのもののような気がするんだけど・・・
今度の舞台はベネズエラ。どうせすぐ忘れるだろうからメモしておくと、南アメリカ大陸最北で中央。
コロンビアと隣りあわせでこっち経由でアメリカに麻薬が流れたりする。
麻薬とゲリラの横行するこの土地は、当然のごとく貧しい。
その中でもさらに土地に伝説すら無いようなただの山地。枯れた油田。
ここで超伝導に使える希少土が取れることが分かった。
土地の持ち主は不法住居しているコロンビア人を一掃しようと企む。
コロンビア人たちの中心人物はマグダレナのマリア。彼女は自分らを助ける使徒が現れると預言する。
そして、その地を目指して旅する脱獄者・犯罪者・ゲリラらの一団があった・・・
彼らが・・・使徒?
莫大な財宝の上で血の祝祭が行われる。
殺・殺・殺、と血が大地を染める。
シエラ、すなわちただの「山地」という名しか持たない、伝説なき地で。
極悪非道の面白さ。シリーズを激しくオススメ。
『トリニティ・ブラッド | Reborn on the Mals 嘆きの星 | 』 |
吉田直 角川スニーカー文庫
読始8/31 読了8/31
コメント・・・
三位一体の血?まだ、わからんが・・・
大災厄によって世界は滅びかけた。
吸血鬼とヴァチカンの闘い。そして、現在は小康状態を保っている模様。
そして、ヴァチカンの神父であるアベル・ナイトロードは吸血鬼に対抗できる最強兵器・・・
吸血鬼の血を吸う吸血鬼だったのです(爆)
と、まぁ、そういう話なんだけど・・・
なぜかなかなか正体を現さないので無駄な死人が大量発生。
その辺ちょっと不快感。
オサレイラストに惹かれた人向け?
『深川澪通り木戸番小屋』
北原亞以子 講談社文庫
読始8/31 読了9/1
コメント・・・
深川の木戸番小屋に住む笑兵衛・お捨老夫婦。
大店の隠居だとか、京の名家の出だとか、さまざまな憶測を生むやけに気品ある二人の下にはなぜか生きる気力を失った人が通りかかる。
そんな人達を夫婦が癒すのだ。そんな連作8本。
前半は「いやぁよかったよかった」と言いたいラストをせいぜい「いやぁよか」程度までしか書いてくれないのでスッキリせずモヤモヤしたものが残るのだが、だんだん「よかったよかった」まで言える文章になってくる。
後半まで読み続ければ、〆も良くなってくるし、秘密にされていた笑兵衛夫婦の出自も明かされて、グンと面白くなってくる。
まぁ、投げ捨てない人向けかな(笑)
トップに戻りたい
リストに戻る
ゲームの伝道