麻弥さんの書評
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●「続巷説百物語」京極夏彦[角川書店]2000円(01/06/06)

WOWOWでドラマ化もされた、「巷説百物語」の続編にして(おそらく)完結編。
江戸時代を舞台にした、「必殺」なケレン味のある話。「必殺」とは言っても、ただ悪いヤツを暗殺して終わりではなく、にっちもさっちもいかなくなった状況をすべて妖怪の仕業にしたてて丸く治める…という仕掛けを毎回行います。それが仕掛けだとわかっていても、一体どうやるのか、それでどう状況が変わるのか、色々先読みしながらやっててもさらに(いい方向に)裏切られる感じで。おもしろかったです。
連作中編でありますが、今回はそれがシリーズクライマックスに大ネタとして繋がってゆきます。「死神」はスペクタルでよかった。
でも、これで終わりというのは残念だなあ。最後に語られる「2年前の戦い」もちゃんと読んでみたかった。なんかもったいないなあ…
おもしろいですがお値段もそれなりにするので、京極マニア以外は文庫本化を待ってもいいかもしれません。


みはるさんの書評
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01/7/14 「続巷説百物語」(角川書店) 京極夏彦

又市たち小悪党らの活躍するシリーズ、二作目。

百介の視点でストーリーは進んで行きます。前回では、仕掛けを何も知らされてなくて、又市たちに利用されている立場だった百介、今回はけっこう積極的に関わり、活躍している。
しかし、又市らと百介の間には確実に越えられない線があるのを、百介は最初から感じつづけている。中盤、<幽霊船>に乗ってしまった百介、これで小悪党の仲間入りかと思いきや――ラスト、このラストは、悲しい――切ないです。

覚悟は、ある時に決めるものではなくて、だんだんと自然に身についてくるものなんだろう。だから時々置いてきたものを思い出し、忘れていることに気づき、喪失感をおぼえる。今の私はなんとなくそれが感覚として分かる気がする。ちょっと前の私は、覚悟を決めなきゃ、決心しなきゃと思い込んでいて、その頃これ読むと、かなり立ち直れなかったかもしれない・・。

「死神」と「老人火」の間の事件も、結末が分かっているだけに、読みたいような読みたくないような・・。
又市は、その大きな事件をきっかけに今度は黒装束を脱げなくなったんだろうか、それともそれは単に百介が居たから変装しただけなんだろうか。どっちにしろ、又市の隣にまだおぎんがいることは、なんだか安心した。
「船幽霊」でおぎんに「船の舳で鈴振ってただけ」とか言われて困っている又さんが私的ツボでした(笑)
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