感想
約、一年半振りの再読になります。このHPを作って最初に感想を書いた作品ということもあって、思い入れのある作品です。今回、映画上映に先駆けて再読しました。初読のときには、物語の疾走感に一気に読み進めてしまいましたが、再読だと気が付かなかった所に目が行きます。
「中学生42人皆殺し!?デス・ゲーム文学の誕生」という帯の宣伝文句が衝撃的で、興味を惹き付けられて、クラスメイト同士の殺し合いに注目してしまいがちですが、十人十色というように、それぞれ四十二人の心理を丁寧に一人一人、どの様に、この"プログラム"と向き合うかが描かれていて、それなりに、この異常状態に共感できる部分がありました。
果たして、自分が当事者だったなら、どんな行動をとるのか。そのことを考えずにはいられませんでした。
ネタバレ感想
生き残るためには、殺さなければならない。友達が敵となる瞬間。そんな極限状態で人がどの様に変貌していくのか。
積極的に殺しに走る者は、桐山和雄、相馬光子、赤松義生の三人。置かれた境遇に悲観して、自殺したのは山本和彦と小川さくらのカップルと、理性が飛んでしまった自分への嫌悪感から自殺(?)した榊裕子。その他の人間は、こんな境遇でも、隠れて穏便にときが過ぎるのを選んだのです。死にたくもないが、殺したくもない。これが普通の考えなのかな。
しかし、誰かに出逢えば、そいつは殺そうとしてくるかもしれない。現に遠くからは銃声も聞こえて来ている。恐怖心にあおられ追い詰められて、生き残るための危険回避と、自分をいい聞かせる正当防衛を楯に、徐々に殺戮の輪は広がっていく。昨日まで隣で授業を受けていたクラスメイトが、殺人鬼にしか見えない。残酷な設定ながらも、人の弱さが明るみに出る瞬間がきちんと描かれています。
それと、生き残るためには、見捨てることも、躊躇なく殺すことも選択しなければならない。そんな、殺伐とした状況でも、たった三人しか死を選ばないという展開には、人の生に対する執着というよりも、作者自身が命を粗末に扱うつもりがないのが伺えます。
中心として描かれる人物は七原秋也。"プログラム"に選ばれたことに驚愕し、竹馬の友、国信慶時の死に対して憤怒し、頼れる友人、三村信史と共に、なんとかこの状況を打破しようとする心理は、正しく等身大の中学生という気がします。
中学三年生なんて、一人で何かを考えるには、やはり経験が少な過ぎる年齢だと思いますから。そんな中、三村信史と川田章吾の存在は異質といえるでしょう。サバイバルの知識に長け、コンピュータのハッキングもできる。この二人と七原がきちんと出逢えていたなら、展開はまったく違った物になっていたのではないか、と思えるところに作品に広がりを感じさせる。それだけ、丁寧に人物が作られているということかな。
二日間の出来事に、色々なドラマが描かれていますが、センチメンタルな思いだけを胸に、ひたすら琴弾加代子を探していた杉村弘樹が、終盤でようやく思いを遂げるシーンは印象的です。直情バカな行動が憎めなくて。こういうヤツは嫌いじゃない。