hideさんの書評
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『ドッペルゲンガー宮 <あかずの扉>研究会流氷館へ 霧舎巧(講談社ノベルス)
笑い2.0点 0.5点 恐怖1.0点 総合4.0点
 大学生になったら推理小説研究会に入ろうと決心していた「ぼく」は、ちょっとした好奇心でその扉を開けてしまった。そのせいで、 <あかずの扉>研究会の一員となっていた。入会して早々、ただのサークルにすぎない<あかずの扉>研究会に、人捜しの依頼が持ち込まれた。 その先に待っていたのは、残虐な連続殺人事件だった・・・。

 第12回メフィスト賞受賞作。島田荘司氏の推薦を受け、さらにペンネームまでつけてもらった霧舎巧のデビュー作。
 本書にも書かれているが、まさに「ミステリフェロモン100%」の新本格推理小説だ。怪しげな館、連続殺人、密室、首なし死体、 さりげない伏線の数かず・・・などミステリファンのための小説だ。ご都合主義なところや現実味に欠けるなど不満もあるが、 それは新本格ミステリだから、謎解きを楽しむだけの小説だから、と思えば許せてしまう。
 まだ、デビュー作ながら、明らかにシリーズ化をにらんで書かれたと思われる、様々な特徴を持った主要キャラクターの数々。 あまりキャラクターばかりにこだわられるのも考えものだが、本書は、キャラクター以上に論理的謎解きや大がかりなトリック、 巧みな伏線にこだわっている小説のようだった。
 「新本格ミステリ」好きには、お薦めの一冊だった。


Quanさんの書評
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「ドッペルゲンガー宮 <開かずの扉>研究会、流氷館へ」(講談社ノベルス)霧舎巧

 第12回メフィスト賞受賞作。これは面白かった。
 単純に伏線の張り方とその活用をみれば、「双頭の悪魔」(有栖川有栖)にも匹敵するのではないか。少なくとも説得力はある、私はそう思う。島荘の紹介文や、帯のうたい文句はかなり怪しげで、「もしかしたら地雷かも」と危惧してたんですけども・・・・とんでもない!まさしくこれぞ「新本格」という作品でした。
 たしかにキャラはあざといです。というかほとんど不要な域にまで恋愛(ラブコメ)要素が強いです。視点を「二本松翔」一人に絞っているのも意見が分かれるでしょうし、なにより「新本格」を意識しすぎているということが鼻につくこともあるでしょう。キャラの動かし方にもやや不自然さが残ります。
 それでも私はこの「デビュー作」に最高評価を与えたいです。そう、これはデビュー作なのです。歴代の有名新本格作家達のデビュー作たちとくらべても、勝るとも劣らない出来だと思ってます。次作も買います。
 <開かずの扉>研究会の面々に関しても、某拝み屋や自称神、地図魚などと比べたらかわいい物です。「不要なまでのラブコメ要素」と書きましたが、そういうのは嫌いじゃないです(大好きだとも言う)。<開かずの扉>研究会の次なる事件を心待ちにしてます。
評価☆☆☆☆☆
麻弥さんの書評
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●「ドッペルゲンガー宮」霧舎巧[講談社ノベルズ](99/8/5)

正式タイトルは「ドッペルゲンガー宮 《あかずの扉》研究会 流氷館へ」です。
第12回メフィスト賞受賞作。あのメフィスト賞ですから期待はしてなかったんですが、今回はストレートなミステリらしい…と聞いて。推薦文は島田先生だし。(でもこの先生の推薦する本って、私的にはちょっと…なのが多いんだけどね)
怪しげな洋館からどこかに拉致された10人の男女。そして起こる連続殺人。…といういかにも新本格な舞台で、「惨劇の進行状況が携帯電話で中継される」とか「密室と中と外に配置された名探偵」というような趣向が。
話自体は、ついツッコミしたくなるほどアラが多いんですが、個人的にはこの「大トリック」が結構気に入りまして。最初に島田荘司の「斜め屋敷」の一節がひかれていますが、私もそこの部分、お気に入りなんです。
そのトリックの「心意気」が気に入ってまして。今回の話も、同じくその「心意気」がよかったです。
ただ、この話自体は「新本格」ムーブメントが起こった頃の作品たちの「最大公約数」的な雰囲気を感じるんですよ。でもまあ、これからどうかわるかわかんないし。とりあえず次作は読んでみようかな。


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