「ブギーポップ」シリーズでお馴染みの上遠野浩平が、いよいよ一般小説分野に登場。(といっても講談社ノベルスは限りなくライトノベルズに近いですが)
ファンタジー世界でのミステリ。圧倒的な存在であるはずの「竜」が何者かによって刺殺された。その謎に仮面をつけた戦地調停士のエドワースは挑むため、竜に面会した6人の人々に会うために旅立つが…
買ってきてから一気読み。読みやすいなあ。「ブギーポップ」よりもよっぽど分かりやすい話だし。楽しく読めました。
これがまだ無名の方の作品であれば、手放しで誉めたと思います。そして、要チェック作者リストに連なったでしょう。でも、上遠野浩平の、ブギーポップ以外での初めてのシリーズで、しかも初めての一般向けラインナップということで、そりゃもう多いに期待してたわけです。そういう意味では物足りないところも。
まず、ファンタジーとしてはかなり薄い。道具仕立ての独自性が足りない。でもま、講談社ノベルズはファンタジーのラインナップではないので、これ位の方が普通の人でもついていけるだろうからいいのかもしれないけど。
あと、ミステリとしてはサプライズが少ないかな。初期設定が魅力的だったわりに、完結編がその期待を凌駕するものではありませんでした。悪くはないけど。準備にかなり手間暇をかけた殺害トリックはわりと好みですが。でも「ブギーポップは笑わない」の方がよっぽどティスト的にはミステリかも。
キャラクターの見せ方はさすがお手のものですね。私の好みのラインナップから外れたまっとうなキャラでありますが、ヒースがお気に入り。
講談社ノベルズとしては、十分及第点をクリアしています。ただ、突破するには力が足りない。読んで損はないと思うけど、この作者のなら「ブギーポップは笑わない」の方がおもしろいので、上遠野浩平が未読の方はそちらを読むべきかも。
このシリーズ、次回作は「紫骸城事件」で、廃墟となった城で魔術師達が次々と亡くなっていくという「館モノ」だそうです。主人公は今回の話にちょっとだけ名前が出てきた、双子の戦地調停士。キャラ的に結構おもしろそうな二人なので、楽しみですね。
イラストは「女神転生」シリーズでお馴染みの金子一馬さんですが、これが素晴らしい!! 独自の濃い世界を展開してくれてます。ただ本のデザインはちょっとうるさすぎるかなあ…イラストの素がいいんだから、もっと生で見せるような形にしてほしかったです。