麻弥さんの書評
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●「紫骸城事件」上遠野浩平[講談社ノベルス]880円(01/06/08)

「殺竜事件」の続編。今度は、前作で少しだけ名前の出てきた双子の戦地調停士メインのお話。前作登場の仮面の戦地調停士・エドと風の騎士・ヒースロゥも、出番は少ないながらもオイシイ役で出演。
ファンタジー世界でのミステリ。300年前、魔女リ・カーズが作り上げた紫骸城。リ・カーズは宿敵オリセ・クォルトとの戦いで共に姿を消したが、城はそのままの姿で残り続けた。そして今、そこでは5年に一度「限定魔導決定戦」が開かれており、フローレイド大佐は審査員としてそこに招かれていた。紫骸城の壁は魔法をすべて吸収するために、特定の転送呪符を使用しなくては中に入れず、入った大会関係者も1週間しなくては外にでることはできない。そんな環境で大会は始まったが、次々と魔導士たちが惨殺されて…
いやあ、堪能しました。前作は過剰に期待していたせいで期待外れ感が結構ありましたが、今回はそれほど意気込んでなかったので楽しめました。その要素を抜いても、一作目よりはいいデキかと思います。色々な要素が繋がってきて、世界観にも広がりがでてるし。ミステリとしては特殊ルールでの殺人となりますが、何ができて何ができないかのルールの明示があやふやですからミステリとしてはフェアではないと思います。解決もそれほど驚愕というわけでもないし。でも雰囲気が好きなんだなあ。あのケレン味があるところとか。青くさいんだけども、それがファンにはたまらんのです。
双子の超性悪戦地調停士(でも美形)も期待どおりで。金子さんのイラストも色気があって素敵だし。
それにしても上遠野さんってキャラクターのバランスや関係性のつけ方がうまいですな。ヒーウロゥなようなヒーロー属性を持った欠点のないまっすぐなキャラというのは普通はうさんくさくなりがちなものですが、それをこれだけ魅力的に描けるし。一方で底意地の悪いキャラの描写もうまいし。
キャラ萌え的には、七海連合内部の人間関係が気になります。ヒースロゥ×エドもいいんですが、ヒースロゥ×キラルなんか好みなんだけどなあ。性格の悪い美少年受で互いを非常に嫌ってるところとか、好みなんですが。


Quanさんの書評
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「紫骸城事件」(講談社ノベルス)上遠野浩平

 「殺竜事件」の続編。
 前回よりちゃんと「ミステリ」してますね。伏線の張り方とか。場面設定とか。トリックの作り方とか。密室状態の城、“嵐の山荘”での事件。まあこんなものでしょう。前回ほど期待していなかったために前回よりも面白く感じた。
評価☆☆☆☆
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