「紫骸城事件」に続く、仮面の戦地調停士・エドのシリーズ3作目。魔法ありのファンタジー世界を舞台にしたミステリのシリーズです。
誰一人として立ち入ることができなかった塔の上で、ある姫君が遺体で発見された。水晶に閉じ込められた、あまりにも美しい姿で…
そして犯人が逃げ込んだとのことで、国家のバランスの隙間を縫うようにわたってきた海賊島ソキマ・ジェスタルスにダイキ帝国軍が犯人引渡しを要求し、開戦は避けられない状況になった。事態を打開させるために海賊島の首領が選んだのは、七海連合に仲介を頼むことだったが…
シーンの派手さといい、クセのあるキャラクターの魅力といい、このシリーズの中では今回の話が一番おもしろかったです。エドはもうひとつ出番が少なかったものの、今回の実質主役である海賊島の首領であるムガンドゥ三世のキャラがいい味だしてたなあ。二世の「動機」もよかったし。ああいうクセのある人物を描写せると上遠野さんはうまい。
ミステリとしては、美しい謎の答えがあまりにも「実も蓋もない」結果になってしまうところが、個人的には好みでした。謎を解くということは、そういうものかもしれませんが。
物語としてはそれぞれ独立したシリーズですが、今回の話は一作目の「殺竜事件」に登場したキャラがたくさん活躍しているので、そちらを先に読んでいた方がいいかも。