Quanさんの書評
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「ファイアストーム 火の星の花嫁」(ソノラマ文庫)秋山完

 ……あれ?短編集じゃない。
 今回の長編は、秋山作品の世界観において重要な位置を占める「植物」のお話。「ペリペティア」の遙か昔、人間が火星に移民していた頃のお話。無論後書きを除けば独立したストーリーであるため単体で楽しめる。アクション的要素の強かった「リバティランド」「ペリペティア」よりも、SFメルヘンであった「ラストリーフの伝説」に近い。迷宮の谷に住む魔女の正体は?といったストーリー。
 微妙に文章が硬かったり、何か昔の作品を引っぱり出してきたようですが、まそれはそれで。この人の作品自体でることが稀ですし。次こそはシリーウォーとジルーネお嬢様が敵としてでてくる話を。
評価☆☆☆☆

麻弥さんの書評
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●「ファイアストーム 火の星の花嫁」秋山完[ソノラマ文庫]500円(00/10/30) 「ペリペティアの福音 下〜聖還編」で大好評を博した秋山完さんの新刊。それにしても今回の作品も発行ラインナップに入ってから何か月延期されたことか。「ペリペティアの福音」と違って続きものじゃないから待つのはまだ気楽でしたが。
地球から火星に人が移り住んで数百年。地球といつしか連絡がとれなくなった火星では、乏しい資源とさほど高くない科学技術をやりくりしながら、なんとか人々は生きてきた。交易飛行船〔チキサニ〕の連絡機のパイロット・カズマはセーガニア帝国の戦闘機に追われ、二酸化炭素が充満する渓谷に不時着する。そこで彼がであったのは、伝説の魔女だった…
ティストは違うものの、これも「懐かしき未来」シリーズの一作。このシリーズっておとぎ話めいたところがあるけど、今回はSF色が強いです。
いつもながら、イメージがすばらしいです。特に荒野を旅していく庭師のイメージには泣けるものが。その分、カズマやマリナはちょっと描きたりないかなあ、と思うところもあります。
秋山完さんはイメージの美しさと「泣かせ」が見事な、私のごひいき作家さんです。どの話から読んでも大丈夫ですが、「リバティ・ランドの鐘」あたりが初心者向けかと。「ペリペティアの福音」はアイデアの独創性が光作品で傑作ではありますが、ちょっと独自色が強すぎて分かりにくいところがあるからねぇ。

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