Quanさんの書評
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幻惑密室

 私の初めて読んだ西澤作品であり、それまでのミステリ観を一変させられた作品。インパクトで言うなら、大学に入ってはじめて読んだ新本格小説「姑獲鳥の夏」(京極夏彦)に勝るとも劣らない。
 いわゆるSF新本格・SFパズラーなどといわれる作品があることを、こうゆう作品も「アリ!」なんだってことを感じた。超能力と本格推理小説って、水と油じゃあないんですねえ。
 設定がマンガ的であることは、ヤングアダルト小説を読みあさって来た私にとっては障害にならない。面白いじゃん。

「だって、かあいいんだもん、嗣子ちゃん」
評価☆☆☆☆☆
麻弥さんの書評
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●「幻惑密室」西澤保彦[講談社ノベルズ](98/1/8)

待ちに待った講談社ノベルズの発売日でした。いやあ、もう何日通ったことか…
最初は西澤保彦の新刊から。「超能力者問題秘密対策委員会」略称チョーモンインの、出張相談員(見習い)の神麻嗣子シリーズ初の長編です。短編は雑誌「メフィスト」に二編掲載されています。「念力密室」と「念力密室2」の間にあたる話。「〜2」の方を読んだ時にその間の話が読みたかったんですよ〜〜。その楽しみに待っていた長編です。
西澤快彦の本っていうのは、“新しいルールを使ったゲーム”な本格推理物です。不可解だけれども法則性のある現象があって、それを中心に事件が発生していく…という感じなんですが、このシリーズの場合はそれが「超能力」です。健康器具販売会社のワンマン社長の新年会に呼び出された4人の男女。なんと、その家から「出れなく」なってしまった。そして、起こった殺人事件…
今回の「ルール」は結構複雑。西澤作品が初めての方、中盤の「ルール説明」は「こういうものだ」と受け入れてくださいね(^ ^;)。ここで「なんでだ〜〜〜」って思わないこと(^ ^;)。それが西澤作品を楽しむコツです。
…で、今回の話は。…ルールは魅力的なものだったけど、話の構造は期待したほどトリッキーじゃなかったです。ルールの説明のあと、私が思い付いた通りに展開するんだもんなあ…犯人は薄々この人かなあ、って思ってましたけど、動機とかは考えてなかったから、完全正解ではないけどね…でも、犯人そのものよりも、せっかくの長編なんだから、現象を起こした構造にもっとトリックがしこんであると楽しみにしていたから…ちょっと肩透かしです。
でも、嗣子ちゃんがかわいかったので満足ですが(爆)。保科さん(ミステリ作家)と能解警部(美女)と嗣子ちゃんのなんともいえない三角関係もすごくよかったし。キャラ中心で話をみると、満足だなあ。
このシリーズって、映像化しないかなあ。月曜8時あたりのドラマとかいいと思うんだけど。あ、でもこの枠は原作がマンガか(^ ^;)。…アニメでもOK!!

永田さんの書評
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幻惑密室/西澤保彦

『チョーモンイン相談員(見習)』神麻嗣子シリーズ第一弾長編。本当はこの前に短編があります。それでもシリーズとしては第2作目、ということで、この話のなかで初めて、このシリーズのメインキャラである作家・保科と能解警部と神麻嗣子ちゃんがそれなりの関係を形作って行っていて、ミステリ本編と同時にそちらの方も楽めます。どちらかというと私は、メインの謎よりもこの3人の方に注目しながら読んでしまったような…ははは。
ストーリーについて言えば、少し長編にしては物足りない部分もあったような気がします。あの最初の超能力殺人(語弊あり)で最後まで引っ張るとはおもわなんだ。勿論、この超能力は面白いものだったし、その属性とか機能とか制限とかもきちんと描かれていたので、それはそれで読んでいて楽しめましたが(『ハイヒップ』というネーミングは如何な物かと思うが)。
死体が一つだけで最後まで引っ張れる、というのは大量殺人傾向のある昨今喜ばしいことなのか。でも途中で読んでいてふと「え、もしかしてこのネタ一つだけで最後まで引っ張るわけ?えええ?」とかなり驚いてしまいました。最後に近づいてくると、意外なことなんかも判ってまた引き込まれましたが、でも中だるみな印象は否めないかも。
この中で、西澤保彦は妙に女尊男卑的思想を語り、人間を語り昨今の若者を語り、語り部となっています。この人きっともの凄く語りたい人なんだね…どれもなかなか面白く読めましたが、男性の書く物であからさまにこう書いてあるのって珍しいかもな。対照的なのが島田荘司か。こういったレトリックはキライではありませんが、あんまり大筋には関係ないと思って読んでいたらまんまとあった。こういうあたり、かなりしてやられたといった気分。
にしてもこの犯人は意外でしたね。これこそ最大のしてやられたで賞(鈴木史朗並み…)。こういう、意外ででも説明されると納得できるオチは好きです。とにかくラストであっといわされるのが好きな人にはオススメ。


hideさんの書評

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『幻惑密室』 西澤保彦(講談社ノベルス)
笑い2.0点 0点 恐怖0.5点 総合4.0点
 超ワンマン社長の自宅での新年会に招かれた4人の社員。そんな4人を次々と奇妙な現象が襲う。それは彼ら全員が、邸内から出られなくなり、 しかも邸内だけ外界とは時間の流れが変わってしまうというものだった。そうした状況下で社長が何者かに殺害されてしまうのだった。
 この奇妙な時間の真相解明に<超能力者問題秘密対策委員会(略してチョーモンイン)>の見習い相談員・神麻嗣子が挑戦する。

 超能力と本格ミステリという破天荒の組み合わせを見事に成功させている西澤氏。彼が手掛ける<神麻嗣子シリーズ>の1作目。
 <チョーモンイン(作中でこのように略されている)>という謎の組織や、かなり強烈なキャラクターの神麻嗣子とおよそ 本格ミステリらしくない何かアニメチックな設定のため、好き嫌いがわかれる作品だと思う。しかし、真相に至る過程やラストなどは、 しっかり本格ミステリになっている。
 著者が大ファンだという水玉螢之丞さんのイラストを表紙と挿絵に使っていることで、かなり独特な雰囲気のノベルスになっている。 そのため、なかには読まず嫌いで読んでいない人もいるかもしれない。だけど、この1作目を読んでから、自分の好みに合うかどうか 判断してもらいたいと思う。


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