永田さんの書評
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実況中死/西澤保彦

『チョーモンイン相談員(見習)』神麻嗣子シリーズ第二弾長編。実は、このシリーズで一番最初に読んだのがこれでした。その時にはこの主要キャラ三人の関係などよくつかめてなかったので、いまいち印象が薄かったりするのですが。
ただ、ストーリー的に見ても前作『幻惑密室』には少し劣るでしょう。内容はこちらの方が凝縮されていて濃い感じはしますが、どうにも前作で味わった最後の犯人像での壮快感がありませんでした。
っていうかさー。それはナシだろう、というネタの連続で。多分、それらはそれぞれ関連していてお互いでお互いの論理の補強をする、とパターン的には『幻惑密室』を踏襲しているんだろうけど、それが私的にNGなネタだったんです…犯人もトリックも。ほいだったらちゃんとそう書いとけ!記憶喪失とかそんなの後になって出てこられても困るよ。
あとメインキャラがトリックにからんでいた、というのも私的にはボツでした。何故か、と言われるとキライなパターンだからとしか答えられませんが…つまり私の好みには合わない話だったのでしょう。その証拠にネットでの評判なんてなかなかいいみたいだし。それでも鏡になってって…そんな馬鹿な。
でも相変わらず嗣子ちゃんは可愛かったー。腹巻き巻いて寝る嗣子ちゃん。あたしはもう嗣子ちゃんが何かするたびに保科さんと一緒になって「かかかかかばええええー」と涎たらしてましたさ…オヤジと同じレベル。
でも不思議なのが、何で保科さんなんかに能解警部が惚れているのかってことです。どんな慧眼な彼女でも人の心までは覗けないから…でも一応保科さんが探偵役なのよねこのシリーズでは(だから探偵役が××ってのがー!!)。なのに何故かシリーズ名は『神麻嗣子』。やっぱりキャラが強い方が勝ちなのね…。でも推理小説の中で一番探偵扱いされていない主役保科匡緒。本が売れなくても強く生きろ。
あ、でも最後の部分はちょっと好きだった。あの終わり方はほんわかしていいかも。


Quanさんの書評

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実況中死

 神麻嗣子シリーズ第二弾〜。
 ますます冴え渡る西澤節!暴走する嗣子ちゃんの可愛さ!好きだな〜こういうの。
 オチ(あえてラストとかトリックとかではなくこの単語を使う)は凄いです。少しわざとらしいかな?と感じないわけではありませんが、エブリシングOK〜(いかん、このシリーズになると理性が飛んでしまう)
評価☆☆☆☆☆
麻弥さんの書評
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●「実況中死」西澤保彦[講談社ノベルズ](98/9/12)

「幻惑密室」に続く、「チョーモンイン」シリーズ二冊目です。「チョーモンイン」というのは、「超能力者問題秘密対策委員会」の略で、超能力者が起こす事件を解決するための秘密組織で、その見習い相談員の嗣子と能解刑事、ミステリ作家の保科が事件を解決するというシリーズものです。SF的設定の、ミステリです。話自体はコミック的な軽い話ではありますが、ミステリとしては本格的。
今回は、テレパシー。それも、たまたま一方的に特定の人の見えてた光景が、ある特定の人に見えてしまう…というもの。しかも、その相手は、殺人を犯しているらしい…次の被害を防ぐためにどうすればいいか?という感じですね。
前作はもうひとつしっくりこなかったんですが、今回のは見事!今までの西澤作品の中で個人的には一番よかったのではないかと思います。
嗣子ちゃんがかわいいし、3人の不思議な三角関係も進展したような、してないような…いやあ、でもいい感じですねぇ。
短編の方も全部メフィストで読んでますけど、こっちも早く単行本化してほしいなあ。


hideさんの書評
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『実況中死』 西澤保彦(講談社ノベルス)
笑い1.5点 0.5点 恐怖0.5点 総合4.0点
 雷の直撃を受けてから、岡安素子には他人の見た風景がそのまま見え、”体験”できる超能力が身に付いてしまった。 そのせいで、彼女はストーカー行為や殺人までも”体験”するはめになってしまう。切羽詰まった彼女の訴えに、推理小説家の保科、 能解警部、<チョーモンイン>の見習い相談員・神麻嗣子の3人が調査を始める。

 <神麻嗣子シリーズ>の第2作目。2番目に出版された作品というべきか。というのも、あとがきによると、時系列で見ると今回の事件は、 5番目にくる事件なのだという。その点がちょっとややこしい。
 今回も、いつものように超能力と本格ミステリを絶妙な設定で融合させている。ただ今回の能力は、ちょっとややこしい。テレパシーの 一種のようだが、少々複雑なため説明に結構ページを割いている。それと本書のシリーズキャラクターの1人である保科匡緒という推理小説家の主張に、 著者の主張が露骨にあらわれている気がした。やっぱり、著者自身をモデルにしたのだろうか。ただ、今回はその主張も推理するうえでポイントになっている気もするので、もしかしたら 僕の浅読みかもしれない。


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