「人格転移の殺人」 2000年4月7日 |
ストーリー 大地震によってファーストフード店に閉じ込められてしまった6人が唯一の逃げ場所として逃げ込んだ場所は人格を入れ替える実験装置だった。国家機密の装置の中に逃げ込んだ上に人格がいつ入れ替わるか分らない状態の6人は脱出不可能な隔離された空間に閉じ込められてしまう。しかも、その隔離された空間で連続殺人事件が起こり始めた――。 |
感想 外国が舞台と言うことでちょっと取っ付き難いかと思いましたが(セツナはカタカナの名前覚えるの苦手なんです)、そんなことを感じさせないスピーディな展開と内容でラストまで一気に読んでしまいました。 ネタバレ感想 ラストの落とし方がちょっと「7回死んだ男」とダブっていますね。それだけに、綾子も人格転移の輪の中に入っている可能性を考えずに読んでいた自分に腹が立ちます。まんまと騙されましたね。 人格転移の装置。解説で森氏も触れている様に装置に付いての説明は一切ありませんが、まぁ、必要ないでしょうね。人格が入れ替わる舞台さえあればそれがどんな理屈で行われているかはこの作品には一切関係ないですから。この作品で1番重要なのは他人の心に触れる事でしょうか。それによって生まれてしまう情や親近感。他人に好感を持てるようになるプロセスが上手く表現されているように思います。女性読者がどう思ったかは分かりませんが、男性読者はラストになるに連れてジャックリーンにとても魅力を感じたのではないでしょうか。 |
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アメリカに残された、『宇宙人』の落とし物らしき謎の物体。そこに入った人間は皆、肉体と精神がすり変わってしまう。20年後、偶然そこに集った若者達が、突然の大地震によってその中に入り、人格転移を起こしてしまう…!! 途中までは人数が多すぎていまいちつかみきれなかった登場人物達と(一応年代とか人種とかで分けて区別しやすいようにはしてるみたいなんだけど)、めまぐるしく変わる人格転移とに目がまわってしまっていてストーリーにのめりこめなかった。その人格転移のシステムとか順番とかも最後までいまいち理解できずじまいだったしな。 多分、これがこの作品の欠点だったのではないだろうか。分かり難いのと、めまぐるしくて誰が誰だかのままにブチ殺されてしまうってのと。その予防線も張ってあるので文句もそう言えないけど。 それに、どんどん殺されてしまうのでその描写に時間がかかっていてもう一つ内容が深くない。半分以上はその殺人シーンに費やされているんだもんよ。しかも『人格転移』してるから誰が誰を殺しているのか…アガサ・クリスティーだってもっと親切だ。これをああいうのかしら、「人間が書けていない」って(違う…)。 しかし、それにしてもオチは素晴らしかった。あのオチを味わうためだけでも、この本は読むかいがあります。オチ、というか、この大量殺人は一体誰が引き起こしたのか、という推理が秀逸。その犯人の心理も行動も、私には結構理解できた。そういった状況下では自分もそうするだろう、と思ってしまうところが怖い。 伏線もきちんとひいてあるし(しかし混乱にまぎれて読み落としてしまっていた。ストリックの勝利かしら)、最後まで読めばこれはとても優れた推理小説だったと判る。でも途中が分かり難くてね…。 あの博士の、人格転移に関する演説、結局何も説明していないような気がするんですけどそれは気のせいでもなんでもなくただの詭弁だったのね…えんえんわけわかんないことしゃべりやがって。 |
Quanさんの書評
人格転移の殺人
あああああ。くやしい。うう、トリックがわかっちゃったよう。
西澤作品は、そのロジックに騙されるところが一番楽しいのにい。ということで評価はきつめですがなかなかよいです。展開が読めても楽しめましたし。
この作品を西澤保彦のベストにあげている人、結構いますね。たしかにかっちりとしたロジックなのですが・・・・。
でもできうることなら最後まで騙されたかった。
評価☆☆☆
大地震のため、近くにあったシェルターに逃げ込んだ数人の見知らぬ男女たち。彼らが逃げ込んだシェルターは、入った人間の
人格がその場にいる別人の身体に入れ替わってしまう人格転移装置だった。誰がどの身体に転移しているかわからない状況のなか、
密室のシェルターで殺人事件が発生する。 今回の設定は、単純なようで複雑だ。だいたい身体と人格が違うため、文章が非常にややこしい。そして、そこで起こる殺人事件も、 結局誰が犯人でも別にいいと思う。読んでもらえばわかるが、その推理は結局、推理の域を出ていないのだ。また、その推理自体、 少々都合がよすぎて、いまいち釈然としない。そんなわけで今回は、総合3.0点と低評価にした。ただ、解説をしている作家の 大森望氏は、絶賛しているので僕の評価はあまりあてにはできません。 |