Quanさんの書評
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子羊たちの聖夜

 今回はタックはタカチのワトソン役に徹していますね。内容は結構ヘビーでした。
 ホワイダニット、というやつでした。自殺した者達は何故飛び降りたのか?そして、付け加えるならカモさんの恋の行方は?
 どんなことでも動機になりうることを示してくれました。「正しい」ってなんだろう?・・・・このシリーズ、結構ブラックなことを軽妙に語っているので好きです。シリアスとギャグのバランスは大事ですよ。なによりも読みやすい。
評価☆☆☆☆☆
麻弥さんの書評
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●「仔羊たちの聖夜(イブ)」西澤保彦[角川書店](97/8/28)

タックとタカチのシリーズです。ふたり(+ポワン先輩)の出会いの話も載っています。
今回の謎は、「イブの日の近くに、あるマンションから“プレゼント”を手に自殺をはかった人が、いた。彼女の自殺の動機はわからなかったらしい。その5年前にも、同じように自殺をはかった少年が…」という感じです。
このシリーズは、どちらかといえば突飛な謎をあれこれ「机上の推理」をするものですが、今回の謎は、それほど突飛ではなく、それよりは、世界とちょっと「ズレ」たような違和感というか、そういうのを感じさせる、ちょうどいい感じです。またその推理にのめりこんで行くのも、今までの話は「探偵ごっこ」がちょっと鼻についたのですが、今回のはそうせざるをえない理由も納得がいきました。
なんといっても、タカチがいいですよね〜。いつもの、クールな美女の表面が一皮向けたような感じで。
そして、その事件の真相の重さ。最後に見えてくる、この話のテーマの重さ。この作者の話って、最初の頃の作品はとにかく「ゲーム」に近い軽さがあったのが、こういう方向に近づいていくものなんですね。
この話は、なかなかオススメです。


セツナさんの書評
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「仔羊たちの聖夜」
西澤保彦 角川エンタテイメント

2000年7月16日
ストーリー
タック、ボアン、タカチ。この3人が初めて顔を合わせたのは1年前のクリスマスイヴ、居酒屋コンパでのこと。その日、クリスマスプレゼントの交換をと全員コンビニへ向かい、買った品々をビニール袋に集めている最中、真上のマンション最上階から、1人の女性が飛び降りてきた。
タックシリーズ学生編第3弾
感想
冒頭のタック、タカチ、ボアンの三人の出逢いのシーンが最高ですね。それぞれの個性が上手い具合に絡み合っていておそらくシーリーズ中でも名場面でしょう。何かをあえて隠しながら話を進めるタカチ。タカチが何を隠しているのかが気になって一気に読み進めてしまいました。

ネタバレ感想
冒頭の痛快なまでの面白さと違い、自殺の動機を調べるに当たって打って変わったシリアスな人間関係になり随分思っていたのとは印象の違う作品でした。親の子供に対する保護者の思いと親の束縛を跳ね除け自立したい子供の思いがひどく切なく感じました。冷静沈着に思えたタカチが自分の感情に流されて行動してしまう辺りよほど父親に対してコンプレックスがあったのでしょう。ヤマトとエリちゃんの裏切りはあって欲しくない出来事でしたが、大金に目が眩んでしまうとこんなものでしょうか。


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