麻弥さんの書評
●「銀の檻を溶かして 薬屋探偵妖綺談」高里椎奈[講談社ノベルズ](99/3/9)
第11回メフィスト賞受賞作。メフィスト賞は、私は第6回で挫折したんですが、今回のは大森望さんの推薦文と、あとはあらすじを読んで私の好きそうな話だろうって思って買ってました、が。
……あまり客の来ない薬屋。そこに住んでいる3人の少年たちは実は人間ではなく妖怪である。彼らは薬屋を営む傍ら、妖怪が絡む事件の探偵を副業として行っていた。ある日依頼にきたのは、うっかり悪魔と契約をしてしまった男で……
ライトノベルズ的なミステリとのことですが……うむむ。あんまりおもしろくなかったです。ライトノベルズとしても、ミステリとしても。
ミステリとしては、やはりあの「密室トリック」はいただけなかったし、ライトノベルズとしてはキャラにそれほど魅力を感じませんでした。個人的には、主役の3人が「妖怪」という特殊な存在でありながら、その妖怪がこの世界に生息している“ルール”がきちんと描かれていないのが、落着かないというか。…いくらライトノベルズでも、その世界の“ルール”はきちんと描かないとダメなんじゃないかなあ。
メフィスト賞って、今までも色々と問題のある作品が受賞してきましたけど、おもしろくはなくてもどこか変でとんがった作品が多かったんですが、今回のはなんで?って感じで。「メフィスト」を引っ張り出して対談を読んでみたら……なるほど。でもさ、リベザル、あんまりかわいいとは思わなかったけどなあ…
みはるさんの書評
1月2日 「銀の檻を溶かして 薬屋探偵妖綺談」(講談社ノベルス) 高里椎奈
帯に「本格ミステリとヤングアダルトのアルペジオ」とか書いてありますが、本格ミステリかどうかはともかく・・・・キャラがよいですね。
薬屋を営みながら、副業で探偵まがいのことをやっている、普段は人間の姿をしているけれど実は妖怪の3人組―クールな美少年とやさしげな青年と、純でけなげな少年―という、非常にありがちなツボをついてくるキャラたちです(笑)
こういう、ミステリ+αがある話、ミステリとしてのトリックとか謎解きの要素以外の部分で、おもしろい話は好き。「雪の妖精」の真相は、銀河鉄道の夜の引用と重なって、心に残る。(しかしこれはミステリ的にはどうなんだろう・・・)
主役3人以外にも、サブキャラもいい味だしている。
しかしこのシリーズがどういう方向に進んでいるのかまだ分かりませんが、どうせならあの建築探偵シリーズのように、もっとわざとらしく狙ってみてもいいかも・・・(作者はまっとうな人なのかな、ってべつに篠田氏がどうこうと言っているわけではないですよ、しかしこれを読みながら建築探偵を思い出してしかたがない、リベザルと蒼はキャラが似てるし・・・どっかのごくつぶしともかぶってるけどね(笑))
神薫さんの書評
『高里椎奈』
講談社
「銀の檻を溶かして 薬屋探偵妖綺談」★★
深山木秋・座木・リベザルの三人は、フツーの美少年かと思いきや、実は妖怪だったのです♪彼らは普段は閑古鳥の薬屋に身をやつしてはいるが、合い言葉を聞くなり妖怪による犯罪を調査する妖怪探偵として謎を解くのであった!雪の密室条件で発見された子供の死体&幽霊のノックの謎を、彼らは解けるのか??
《登場人物紹介》の1行目からキている。なにしろ「深山木 秋 (中略)妖怪。」である。ん?
「妖怪」?他のメンバー紹介も「妖精の一種」だの「悪魔」だのでなんとも楽しそうです。
「ゲゲゲの鬼太郎」大好きな世代としては燃えるシチュエーションなのですが、どうもくどくどしい描写とキャラ描写のわかりにくさも手伝ってか、世界にノれないのでした。作者の脳内では自明のことでも、読者にはチンプンカンプンなことってあるから、もう少しキャラ描写に工夫が欲しかったかも。いっぺんにあれこれ明かしてしまうのではなく、わざと抑えて丁寧に書き、小出しにしていっても良かったんじゃないかと思います。
展開はちょっともたつきがちで、ミステリとしてはアッサリかな。謎解き場面が急ぎ足で、味わいが無いです。そして、ジェネレーション・ギャップのせいか、私には秋クンのトバすギャグがよくわからない(泣)。キャラは可愛らしいので、描写がこなれて来るのを期待しつつ、シリーズ続巻も読んでみようと思います。
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