木戸孝之介の小説二篇が、文壇の最高権威たる日本文芸大賞にノミネートされた。孝之介は選考会の結果を待つため、
そしてある人を探すために<プリズンホテル>に向かった。その頃、52年という信じがたいほど長期の懲役を終えた
一人の老人が<プリズンホテル>を目指していた。
毎回、荒唐無稽な設定で楽しませてくれたこのシリーズも本書でいよいよ完結する。「偶然のめぐりあい」ばかりで
あまりにもできすぎてるストーリーは相変わらずだが、それがこのシリーズの醍醐味なのだと思う。
今回の宿泊客は、木戸孝之介の身内と編集者御一行、大曽根一家、子役の卵とその母(役者)、52年の懲役を
つとめた老人とその連れ、教師。とバラエティに富んでいる。
「春」は出会いと別れの季節、そして雪どけをむかえる季節でもある。本書は「春」というタイトルに偽りなしの
シリーズ完結編になっている。
この総合5点は、シリーズを通して読んだ評価なので、初めて読む人は「プリズンホテル」から
読んでいただきたい。
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