麻弥さんの書評
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●「六枚のトンカツ」蘇部健一[講談社ノベルズ](97/9/4)

あの、「メフィスト賞」の第三回受賞作。表紙のアオリ文句は、「驚天動地のアホバカ・トリック、ユーモア・ミステリの最終兵器!」だったし、どんなバカバカしい話なんだろ?…と期待して読んだんですが…結構、まっとうな、ユーモアミステリでした(^ ^;)。
設定にしても、トリックにしても、話にしても、それほど無茶じゃないんですよね。バカバカしいオチの話は確かに多かったけど、でもあれではコントのオチのようで。第二回のメフィスト賞が、あの清流院流水で、あの人は本当に無茶な話を書いてたからな(^ ^;)。…それを基準で「どんなバカバカしい話なんだろ?」と思ったから、っていうのもあるし…バカバカしいミステリなら、竹本健治の「トリック芸者」シリーズは、本当にバカバカしい話だった。(すごく好きなの〜)
あ、そういう「バカミステリ」を期待するとイマイチだけど、普通に読めばそこそこ楽しめると思います。個人的には、10と13がよかったです。


hideさんの書評
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『六枚のとんかつ』 蘇部健一(講談社ノベルス)
笑い1.0点 涙0点 恐怖0点 総合1.5点
 保険調査員の小野由一が遭遇した難事件(?)の数々。
「音の気がかり」:ある富豪のひとり息子が誘拐された。犯人の電話の背後に「ガッツ石松、ガッツ石松」という 気になる声が・・・。
「六枚のとんかつ」:ある社長が殺された。容疑者は6人の息子。しかし彼らにはアリバイが・・・。
など計15編+αからなる連作短編集。

 第3回メフィスト賞受賞作。なのだが、いったいどの辺が評価されての受賞なのかわからない。
 笑える「アホバカミステリ」らしいが、出てくるのはオヤジギャグと下ネタとテレビのネタのパクリなど、ユーモアのセンスが 感じられないものばかりだ。
 一例を挙げると
 「〜大船に乗ったつもりでいたまえ。豪華客船タイタニック号にでも乗ったつもりで・・・」
 「沈むよッ」

こんな三流芸人のような背筋の凍る笑いが、満載だ。また、ひどいことに「あとがき」でことこまかに自作解説・ネタバラシを披露していて、 もう目も当てられない。と、ほめるところが見つからない本書だが、唯一ほめるとすれば、これを出版した勇気と、 この出来で顔写真付きプロフィールを堂々と公開している著者の度胸をほめたい。
 ブックオフで450円で買ったのだが、100円になるまで待っていればよかった・・・。



神薫さんの書評
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「六枚のとんかつ」★★
 作者あとがきによると、書評では「クズ」と酷評されたらしいが、ネタはともかく変人たちが面白い愉快な本である。トリックの8割強が設定時点で割れてしまうのが難点だが、下ネタ炸裂のテンポよい短編集となっている。このテンションのまま、謎をもう少しひねった続編があったら大好きになるのだけど。主人公のボンヤリさ加減になごむ癒(嫌?)し系ミステリといえよう。
 「そんなわけねーだろ!」とアホ推理が外れたとき、迷探偵が力なくつぶやく言葉「ですよね」が脱力できていいカンジ。肩の力をぬきたい人にピッタリである。下ネタたっぷりの真相に、自分の推理がどこまで肉薄できるかによって読者のお下劣度もはかれてしまう楽しい本だ。
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