9月3日 「ロシア紅茶の謎」(講談社文庫) 有栖川有栖
火村&アリス・シリーズの短編集で、国名シリーズの第1弾。短編集の良さは、普段のシリーズの番外編的な味が出せるところと、1篇1篇に絵画のような独特の雰囲気が出せるところ・・・にあるのかも知れないと思うのだが、この作品にはそういうところが、ほとんどない。だから短編集としては―いまいちかも・・・と私は思う。しかし、その中でも面白かったのは、表題作と、最後の「八角形の罠」。表題作の「ロシア紅茶の謎」は、火村がカッコよかったので(笑)最後のは、設定が面白かった。有栖川有栖氏原案で舞台化されたもので、有栖川有栖原案の舞台の稽古中に起こる殺人事件・・・(笑)けど、トリックは、そんなにうまくいく〜??と思った。
「動物園の暗号」「屋根裏の散歩者」「赤い稲妻」「ルーンの導き」「ロシア紅茶の謎」「八角館の罠」の計6作からなる短編集。 「屋根裏の散歩者」:ある日、平屋のアパートの大家・五藤甚一が、自室で死体となって発見された。彼には、奇妙な趣味があった。それは、屋根裏を歩き回り、節穴から住人の生活をのぞくというものだった。 さらに彼は、その時見たことを、日記にしたためてあったのだ。どうやら犯人は、五藤が『大』と呼んでいる人物らしいのだが、そのアパートの住人には、「大」と呼ばれそうな人物はいないのだった。 「ロシア紅茶の謎」:新進作詞家・奥村丈二は、自宅でのパーティーの最中、死亡する。彼が飲んだロシア紅茶に青酸カリが仕込まれていたのだ。現場に急行した、火村・有栖川コンビは、 その時の模様を出席者に再現してもらうのだが、全く毒を入れるタイミングなどなかった。果たして、どうやって犯人は、毒を混入したのか。 「八角館の罠」:有栖川有栖の小説を劇として上演することになった劇団『トリックスター』。有栖川と火村は、その舞台稽古を見に来ていた。ところが、そこでまた殺人が発生する。 被害者は首から毒物を混入されたことにより死亡したのだが、現場には、毒物を入れる容器が見つからない。−−−「読者への挑戦」付きの、犯人当て小説。 奇妙な暗号、ダイイニングメッセージ、密室での犯人消失、毒殺トリック、「読者への挑戦」とこの1冊で、本格的な推理が楽しめる。が、どれもこれも一筋縄ではいかない。難易度は結構高めだ。それだけに、犯人やトリックが 当たったときはうれしいのだろう。残念ながら僕は、どれも完璧に当てることはできなかった。でも、たまにはこういう遊び心をくすぐられる小説もいいもんだ。 |