麻弥さんの書評
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●「世界は密室でできている。」舞城王太郎[講談社NOVELS]760円(02/05/12)

前から気になってはいたんですが、見下げ果てた日々の企てでの感想を読んで「これは読まねばっ!!」と思って購入。
隣の涼ちゃんが目の前で屋根から落ちて2年。「僕」は15歳、涼ちゃんの弟で名探偵の「ルンババ」は14歳になった。福島から東京に修学旅行にやってきた「僕」と「ルンババ」は奇妙な密室殺人事件に巻き込まれてしまって…
作者は「煙か土か食い物」で第19回のメフィスト賞を受賞。この作品は講談社ノベルス創刊20周年記念の「密室」をテーマにした書下ろしシリーズのひとつで、「煙か土か食い物か」にでてきた名探偵・ルンババ12の物語。物語は独立しているのでこれだけ読んでも大丈夫。
「世界は密室でできている。」かの「トリック芸者」シリーズに匹敵するようなバカバカしい世界が、地続きにある、リアルな世界。句読点や改行のほとんどないたたみかけるような文章と、理不尽な世界のバカバカしさ、それらが独特の空気をかもし出しています。まさに「密室」としか思えない世界の閉塞感と、子供であることのもどかしさ、それらがうまくミックスされてほろ苦い青春モノにしあがってます。物語を見つめる目の冷静な狂いっぷりが魅力的。
「現在」という生き物の臓物をナイフで切り取ったような物語、200ページ程度と薄い本ですし、興味を持ったらぜひ試してほしいです。ただし、「謎解き」としてのミステリの楽しみは求めない方がいいかと。


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