永田さんの書評
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瞬間移動死体/西澤保彦

時空を超えて移動することのできる能力を持った男が、アメリカに住む妻を殺そうとたくらみその体質を利用しようとする。しかし、その時になってとんだハプニングが起こってしまい、気付くとアメリカの家には妻の死体の代わりに見知らぬ男の死体が転がっていた…。
『瞬間移動』という、SF永遠のテーマ(?)を扱ったミステリ。このなかの彼の特技、『瞬間移動』についての説明はとても納得できました。子どもの頃からよく『瞬間移動』というワザを使うアニメキャラなんかはいたんですが、いつも疑問だったんですよね。「どっからどこまで移動するの?服は移動するのに家は移動しないのは何で?でもだったら地球ごと移動することになるし…」などと悶々と思い悩んでいた(馬鹿なガキ…)あの頃をふと思い出しました。この話の中のような仕組みだったらそんなに悩むこともなかったのに…(笑)。しかもついでにその能力の欠陥が事件を引き起こしてしまう、というドミノ的な展開はなかなか楽しかったです。
しかし、この人は我慢強い人だったのね…ていうか、この奥さんはよく今まで殺されなかったもんだ。西澤保彦はきっとマゾだね、といつも読みながら思うのですが(名誉毀損かしら…)、今回はそのマゾっけがまた豪く肥大した男が主人公で、ちょっとイライラすることもありました。最後の最後はなかなか男前だなあ、と思いましたが。諦めることも人生では大切なのよきっと。
話の内容としては、殺人はとにかくとして動機がちょっとうーん、でした。そんな動機、いやそんな動機とは一概には言えないけど、それでそこまでやるのかなあと。あんまり納得できなかったです。それ以外の、トリックとか行き違いとかは、すとんと判って良かったんですが、肝心のメンタルな部分が弱かったような。そうは言っても、十分楽しめました。


Quanさんの書評

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瞬間移動死体

 うう、主人公が情けない。
 超能力者というものは、もうちっと・・・・格好いいモンじゃないかな。トリック自体は毎度さすがだと思うのですが、キャラがいまいち好きになれなかったので。
評価☆☆☆
セツナさんの書評
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「瞬間移動死体」
西澤保彦 講談社ノベルス

2000年7月12日
ストーリー
俺にとって殺意を実行に移し、完全犯罪とすることは簡単だ。ロサンジェルスにいる妻を、日本にいる俺が殺したとなどとは誰も思わないだろう。だって俺は、「テレポーテーション」が使えるのだ。
感想
西澤氏お得意の超能力設定、今回はなんとテレポーテーションです。これでは完全なアリバイを持って殺害が可能ですが、そこに”力”を使ったときの決まり事がある事によって用意に”力”を使えなく色々苦労する和義が何処となく微笑ましいです。殺意を持っている主人公でも、その事によって憎めずに愛着が沸いて来ますね。

ネタバレ感想
思いが何重にも重なって悲しい事件になってますね。互いにもっと素直に、誰も巻き込まずに自分の思いを相手に伝える事が出来たならこの事件は起こらなかったのかも知れません。すべてが露呈した後は誰も傷つかない関係を作って欲しいものです。
ロサンジェルスに集ったときのそれぞれの行動とテレポートにより物が入れ替わる設定が重なり合う事によって複雑な物語になっていいますが、この設定を生かすための状況がいささか都合が良すぎる気がしました。それを感じさせてしまうとどんなラストでも作品事態に興ざめしてしまうので、その点だけが残念です。


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