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すべてがFになる」(講談社文庫) 森博嗣

犀川&萌の人気シリーズ、第1段。

理系、と言われてますが・・。思いっきり文系人間の私は、プログラミングのことも全然知らないので、トリックの解明をされても、はあ・・・って感じでした。しかし、それでも面白く読めました。

犀川は、現実なんていうものは幻だ、というようなことを言ってますが、抽象的、精神的な話に持っていく文型と違って、けっこう現実的なレベルで物事を考えているような気がした。少なくともこの一冊からは。シリーズ、何冊あるんだろう(^_^;)


hideさんの書評
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『すべてがFになる』森 博嗣(講談社)
興奮★★★★★ 笑い★☆☆☆☆ 涙★☆☆☆☆ 熱中★★★★☆ 総合★★★★★
 14歳の時、両親殺害の罪に問われ、その後、精神の問題により無罪とされた四重人格者の天才プログラマ・真賀田四季。彼女は、その一件以来、外界との交流を絶つように 孤島の研究室に閉じ籠もった。ひょんなことから西之園萌絵と犀川創平(主人公・探偵役)は、その真賀田博士の研究所を訪れることになった。そして、真賀田博士の部屋に入ろうとした瞬間 部屋の中から、ウエディングドレスを着た女性が進み出てきた。しかし、その女性は、すでに死んでいて、部屋の中にあるコンピュータには、「すべてがFになる」という謎の言葉が残されていた。

 チャット・電子会議室・ヴァーチャルリアリティ・コンピュータウィルスなど、コンピュータ用語が頻繁に登場する。このページを見ることができる皆さんには簡単かもしれないけど、コンピュータとは縁遠い人 にとっては、ちょっと難しく感じるかもしれない内容だ。しかし、死体の登場シーンや、事件の真相はまさに衝撃を受けるに十分なので、コンピュータが苦手な人も、是非読むべきだと思う。
 この作品は著者・森博嗣氏にとって、デビュー作(?)にあたるようだ。だから、まだちょっとレギューラー陣のキャラクターが確立されてなくて、個性が弱い気がした。それでも 久々に★5つ付けるくらいの面白さだった。



セツナさんの書評
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『すべてがFになる』
−THE PERFECT INSIDER−

講談社文庫 森博嗣
ストーリー
 孤島のハイテク研究所で、少女時代から完全に隔離された生活を送る天才工学博士、真賀田四季。彼女の部屋からウエディング・ドレスをまとい両手足を切断された死体が現れた。偶然、島を訪れていたN大学助教授、犀川創平と女子大生、西之園萌絵が、この不可思議な密室殺人に挑む。
第一回メフィスト賞受賞。
読んだ理由
第一回メフィスト賞受賞作品だから。
評価
熱中度 天才の思考素晴らしい。
キャラ メロメロです(笑)。
残留度 あり過ぎて一言では…。
衝撃 すべてがFになるねぇ〜。お見事!
総合評価 こんなミステリがまだ、隠れていたとは…。
感想
 何から書き始めたら表現出来るか判らない。随所に出てくる哲学思想にまいってしまって、上手く表現出来ない。しかし、今回で当作品を読むのは三回目になるので、ようやく全貌が見えてきた気がします。
 この物語は十冊かけて、主人公の犀川創平と、西之園萌絵の変化が描かれていく。ゼロの状態の彼らは、それぞれの理由から、他人と深く関わることをしていない。他人との交流で、自己が流されることを拒否するために、本心を遮断し、多数の顔を持って態様する術を身に付けた犀川に、両親の死の場面を目の当たりにし、その衝撃から立ち直るために、それまでの自己を封印した萌絵。両者共に意識を意図的に遮断している。この遮断して武装した心理が、どう変化していくかが、残り九冊の一番の読み所であり、作品のテーマでもある。
 そして、その切っ掛けとなるのが、本作でもキーマンとなる天才、真賀田四季だ。天才少女と呼ばれ、幼いときから、その才能を発揮していた真賀田博士。彼女もまた、幼くして悲しみを押さえ込んだ人間なのです。喜んで貰えると思った妊娠に、両親は予想外の激怒をし、殴られて、初めて叱られるという仕打ちを受けた衝撃。その上殺意を持って振りかざしながら、刺し切れなかった手にしたナイフを、背後から両親に刺し押されるという場面に立ち合わされる。たった十四歳という年齢で。

 本作は、犀川萌絵よりも、この両親を殺してしまった呪縛に囚われている真賀田博士の開放がメインだと思う。

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