神薫さんの書評
『灰崎抗』
学習研究社
「想師」★★★★★
若干25歳の草薙は、とある特殊能力を持っていた。想師と呼ばれる彼らは、旋視・転視と呼ばれる能力を駆使し、デッドマンズ・ネットで死者とも語ることが出来るのだ!師匠や弟子、恋人を愛する草薙の前に、強大な敵が現れ、果てしない闘いが始まる!
面白い!すさまじく面白い、手に汗握るバトルアクションだ。こんな面白い作家を知らなかったなんて、人生を損していた気分。
主人公・草薙は特殊な視点から、現実の新たなる位相を見ることが出来るのだが、そのイメージの奔流が素晴らしい。読みやすくリズムのいい文体と、目を見張る描写に虜になってしまう。私の貧困な想像力では数々の鮮やかなイメージが上手く浮かばず、もどかしい思いをした。ヒトの思考を映像化するスコープが発明されたなら、著者の頭にひとつなぎして本作の映像イメージに案内して頂きたくなってしまうくらいだ。
迷える主人公草薙、孤独と狂気を見せつける悪役達といい、どのキャラクターも魅力的でゾクゾクと血が騒ぐ。
息をもつかせぬ展開、奔放な奇想に時を忘れる1冊。見事と言う他は無い。
映画「MATRIX」(1)や細野不二彦の漫画「THE SLEEPER」が好きな向きならば、必ずや大満足されることと思う。
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