麻弥さんの書評
●「螺旋(スパイラル)」山田正紀[幻冬舎ノベルズ](97/8/6)
帯の文句の「全長6.5キロの密室から死体が焼失!!」だとかを読むと、なんだか「ちょー」なミステリの匂いがしますが、実は結構まっとうなミステリです。
ただ、体にねばっこく絡み付くような、そういう雰囲気の。
全編「旧約聖書」と「螺旋」をモチーフにした、読みごたえのあるミステリです。前作の「妖鳥(ハルピュイア)」は「女は天使か悪魔か?」がテーマであれば、今回のテーマは「人間は善か悪か?」。思い込みのせいで、人の見る目というのはどれだけくもってしまうものなのか。
…ただ。ちょっと長く感じました。たかだか500ページ、講談社ノベルズの「弁当箱」シリーズをこよなく愛する私としては、この程度の長さなんて全然苦にならないはずなんだけど…「第一の殺人」が起こるまでが、なんだか長く感じられちゃいました。
神薫さんの書評
「螺旋」★★★
現実的解決がつくミステリでありながら、叙情残る余韻もいい。この〈混沌〉こそが、まさしく〈人間〉なのだ。私はこの大家のSFとミステリを比べたら、どうしてもSFをとってしまうだろう。SFものと違い、ミステリ系の作品はサプライズ重視のせいか、物語に浸りきれない不満があるのである。
戻る