|
『最後の一行で、あなたはのけぞる!』こんな有栖川有栖のアオリを読んで思わず買ってしまいました。こういう、ラスト一行の落とし、というパターンは私は割と好きなもので。で、どうだったかというと、のけぞりはしませんでしたがにやりとは出来る落ちでした。上手く全体がその一行でぴしっときまっています。 内容としては、かなり手軽にさっぱりと楽しめる類のものでした。一応密室殺人ものでもあるのですが、その解決はちょっと…まあ、ばりばりの本格ミステリトリックではないということだけ。西澤保彦ならではの発想であり、トリックでしょう。西澤保彦以外の人がやったら結構無茶なんではなかろうかと思うあたり、そういったイメージを逆手に取ったトリックだなあと思いました。 しかし相変わらず全体にちりばめられたエピソードを最後に一つに繋げて解決への足がかりとする手腕は鮮やかの一言。細かい言葉の端々やちょっとした行動が最後になって意味を持ってくるので、じっくりと読んでも読みごたえがあります。最初の方を読んだときには、主人公が交換殺人の罠にはまっていって泥沼?と言った内容かとどきどきしていたのですが、直ぐにそんなではないと判ってしまいました。そんな展開も期待してたのになあ…ちょっと残念。西澤保彦はあまり、そういった登場人物間のドロドロした感情は描かない方ではありますが。『殺意の集う夜』だって、あの内容にしてはさっぱり纏めちゃっていますし。 全体として、意識したのかどうかかなりの翻訳調で最初は少し違和感がありました。その翻訳調が結局どういうことだったのか、というのがまたラスト一行にかかる大きな伏線なのですが。ここでの探偵役は誰なのかしら、と思っていたらエミリイでしたね。シャロンかと思ったけど、でも彼女の謎解きはちょっとページが早かったから(笑)。 このトリックというか、トリックの動機は(訳の分からない言い方ですがコレ以上の言い方がない)綾辻行人『鳴風荘事件』を思い出しました。模倣とかではなく、根っこに流れるものが同じかな、と。あなたに一直線に、という意味にも取れますよねこの題名は(日本人的解釈…)。 |
Quanさんの書評
ストレート・チェイサー
最後の一行であなたはのけぞる!という有栖川有栖のあおり文句は正しい。見事にのけぞりました。
実を言うと、西澤作品で子供がでてくるのは、年齢不詳の嗣子ちゃんを除いて、この話のエミリイぐらいなのではないだろうか。そのエミリイのこまっしゃくれた性格がいい味を出している。
評価☆☆☆☆☆