Quanさんの書評
「哲学者の密室」(光文社文庫)笠井潔
さて、ベストオブミステリの名前も高い、平成の最高傑作にいどんでみようか。
読む前に、この上下巻2冊を200円で買ったことを何人かに話したところ、「それは原価で買うべき」「『双頭の悪魔』よりすごいかも」などなどの評判を耳にする。一読して納得。これはすごい。
三十年の時を超えて出現したふたつの三重密室。ハイデガー(作中ではハルバッハ)の思想から“死の哲学”。ワトソン役の恋愛感情。仮説の構築と崩壊。それにたいして、神の、あるいは超人(ツァラトゥストラ)のごとき名探偵の本質直観推理。単品としてみた場合、たしかに有栖川有栖の『双頭の悪魔』をこえる作品だろう。
格好良すぎるとか、気障だとか、そういう風に感じることはあっても、それを補ってあまりある読後感だ。作中で前作のネタがばれているので、さかのぼって読めないのが残念。
評価☆☆☆☆☆
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