ヨーロッパの古城を彷彿とさせる館・蒼鴉城(ソウアジョウ)。そこに暮らす今鏡伊都から依頼を受けた、探偵の木更津悠也と香月実朝は、蒼鴉城を訪れた。
しかし、その時すでに、今鏡伊都は、密室で首ナシ死体となっていた。同時に、伊都の息子である今鏡有馬も、首ナシ死体となって発見された。この時から、蒼鴉城に暮らす今鏡家の
連続殺人が始まった。 「死体とドンデン返しが多すぎる!」。ネタバレになるおそれがあるのであまり詳しくは書けないが、この本は今まで僕が読んだことがない類の本だ。 そして、人によって好き嫌いがはっきりする本だと思う。僕は、どちらかといえば「好き」だ。ただし、出てくる人みんなが繰り広げる高度な会話を、ほとんど解説なしで続けられるのは、とても苦しい。京極作品でいえば関口君。 島田荘司作品でいえば、石岡君のような、僕らと同レベルのワトソン役が欲しい。一応、香月実朝というワトソン(ヘイスティングズ?)役はいるのだが、ちょっとレベルが高すぎる。まあ、話の流れから行くと、 当然かもしれないけど・・・。この一点を除けば、僕は、十分楽しめたし満足できた。あ、それとあと一つ、嫌な点を上げるとするならば「最後に野崎六助氏が書いている解説が難しすぎて意味不明」ということくらいか。 自分の無知を棚に上げて、言いたいこと言っているが、一読者の意見として寛大な心で読んで欲しい。 また、この本は、麻耶雄嵩氏のデビュー作でありながら、探偵役である「メルカトル鮎」の「最後の事件」と銘打っているのが非常に面白い。いったいこの後どうなるのか、一刻も早く、著者の第2弾『夏と冬の奏鳴曲』を読んでみようと思う。 |
「翼ある闇」麻耶雄嵩(講談社)
そんなんありかよー!それは反則でしょう。しかし昨今は何でもありなのだ。これは著者の処女作らしい。しかも、この時点で今の私と同年齢。信じられん、知識と文章力、構成力。登場人物紹介で、木更津悠也―探偵、メルカトル鮎―名探偵となっていて、ははあ、これはこういう話なのかな、といろいろ推測してしまった時点でもう作者の術中にはまっている。やられた。しかし難癖をつけると、前半、ちぐはぐな会話、知識が無いと分からない比喩のあまりの多さに、いらいらした。そういうのはさらっといってほしい。それから、ある人物の恋愛には納得がいかない。けれど、この作品はミステリをよく知っている人はたまらなくおもしろいでしょう。良く知らない私でもおもしろかったけれど。メルカトル鮎の登場は笑えた。副題を見てさらに苦笑。