神薫さんの書評
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新潮社
「笑う怪獣 ミステリ劇場」★★★
 悪友同士の京介・正太郎・アタルは女に飢えた独身男三人組。彼らが女をナンパするたび、謎の怪獣や宇宙人が突如出現して大混乱となるのであった。ハチャメチャドタバタな短編集で、UMAの謎は解かれることはない。いちおう「ミステリ劇場」と銘打っているものの、ミステリ度は低めで唐突、怪奇現象とのつながりが苦しかったりもする。ストーリーの脱力感あふれるナンセンスぶりは読み手の好みが分かれそう。
 怪奇現象好き・西澤保彦マニア・喜国雅彦ファンのいずれかに当てはまる人でなければ、オススメ出来ない1冊。文章だけならばアレだが、喜国さんの素晴らしい挿画が気分を盛り上げてくれるので、評価の★を追加した。
 「怪獣は孤島に笑う」三人が孤島で淫獣と化すためナンパを決行するのだが、メンバーにも無理感ありありなのだった。そんなとき、一人一人消えて行き、残された者は互いに疑い合うのだった。
私怪獣は好きですけど、コレに出てくるような腐臭と騒音をまき散らす、可愛くないヤツには会いたくありませんわ。まだ静かなだけチリ漂着肉塊(2003年海岸に打ち上げられ、UMAかと騒がれたが結局クジラの一部と判明した)の方がマシかも。
 教訓:無軌道なスケベはいけません。
 「怪獣は公言を飛ぶ」京介の別荘がぶっつぶれたワケとは。脱力漂い、のちに少しゾクッとする。
 「聖夜の宇宙人」大食いギャルをナンパしてしまった三人。恋の鞘当ての行方はいかに。
 「通りすがりの改造人間」正太郎に彼女が出来た!しかし、本人のやつれっぷりを見ると、正直に祝福出来そうにないぞ?珍しく官能描写?含む、ムチャクチャ物語。
 「怪獣は密室に踊る」京介、結婚す。やっかむ二人だが、なぜか助けを求める電話がかかって来て…。気付けばありがちなトリックだが、緊迫した雰囲気が楽しい。
 「書店、ときどき殺人」古本屋の周辺で、首を切られた連続殺人が起こる。そんな時にアタルに彼女が出来て、デートすることに。お相手は身長180cmの…。
 事象がどんどん起こるだけで、説明や解明は問題とされないところなどが、どうも「うる星やつら」に似ているような。語り手の名前が「アタル」だから、先入観はいってるのか?
 「女子高生幽霊綺譚」三人の前にフラリと現れる美少女幽霊。15年前に殺され(もう時効)てしまった彼女のために、三人がひと肌脱いで推理する!どこか続編を期待させる終わり方なのだった。もし続編があるのならば、表紙&挿画が喜国雅彦だったら読みます私。それ以外だったら…う〜ん…どうしよっかな〜。 

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