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いやあものすごい話だった。とにかく全編ぶっちぎりの全力疾走といった感じで、気がつくと事件が終わっている。とりあえず話はミステリ仕立てなんだけど、果たして合理的で納得の出来る結末であるかというとそうではない。表題にもあるとおりの『怪奇ミステリ』で、それについての蘊蓄もとりあえずないこともないが、この小説の眼目はそんなものではない。とにかくこの話は、主役(主人公は他にいる)の薬師寺涼子のためだけのものなのだ。 薬師寺涼子。警視庁キャリア。通称「ドラよけのお涼」。詳しいディテールは小説を読んでいただくことにして、実に彼女のような性格の女性は身近にいたら迷惑千万だろうが、こうして小説で読む分には文句無しに痛快でいい。 決め台詞「正義とはあたしが勝つことよ!」を初めとして様々な名言があるが、とにかく文句付けようがなく素晴らしいのだ彼女は。これはもう、読むことをお奨めする。事件をとりまく人々の描写も最高に痛烈で、読み物として上質の部類に入るだろう。 にしても、薬師寺涼子。これは作者の『創竜伝』の小早川奈津子に、知性と美貌をつけ加えた存在だろうが、いやはやこの二つが備わっただけで人間ここまでイメージが変わるとは恐ろしい。というか、変えてみせてしまう所が凄い。言ってることやってること、あんましかわんないのにねえ…なっちゃんファイト。 薬師寺涼子とその助手Aこと泉田くんのその後も気になるところだ。泉田くんてば、ニブチン(死語)なんだから、もう! |