永田さんの書評
HPはこちら 奇人堂


東京ナイトメア薬師寺涼子の怪奇事件簿/田中芳樹

『摩天楼』のシリーズ続編。前の本を読んだ次の日にはこの本を買い求めました。それくらい面白くて、どきどきと読み進めることができる話です。
前回に引き続き、東京の都心部で怪しげな事件が発生し、それに巻き込まれて半ば自発的に捜査に乗り出す涼子と、その部下の泉田警部補。今回は、涼子の宿敵の室町由起子も巻き込んで、前回より一層華麗な傍若無人ぶりをさらけだしてくれています。女王様涼子(これが比喩表現なんかではないところが凄い…)もちょっとだけかわいげのある顔を見せたりもして、アクションのみならずそれぞれの人物の相関関係や会話などもとても楽しめました。途中までは、ちょっと話が見えなさすぎて戸惑うところもありますが、中盤以降はまさに一気。最後の最後まで、油断できません。
にしても田中芳樹っていうのはつくづく、上にはへつらい下を見下す、典型的政治家あるいは官僚を描くのが上手い。実にリアリティがあってむかむかきているところを、涼子サマの華麗なる一閃でずばっと切り裂かれるところなどはすかっとします。そういった小物の上に立つラスボス(だろうどう考えてもあれは…)の描写も十分で、ミステリとしてもアクションとしてもファンタジーとしても読めるという逸品。これもまた是非お奨めします。
みしても、この泉田警部補って…もしかして結構強くていけてる人なの?涼子はとにかく、 由起子までいい感じになっていて(レオコン岸本は問題外にしろ)、早く続編を!と言いたいところですが、オリンピック作家にそこまで期待はできませんな…がく。メフィストに載ったという短編が読みたい〜。その号に限って買ってないんだもんなあ。ちぇ。


戻る